札幌市の地下鉄大通駅休憩スペース:不安定な若者の避難場所としての役割とその課題
札幌市内のある高校に通う1年生の生徒は、家庭の事情から朝早く家を出て、学校帰りには地下鉄大通駅の休憩スペースへ足を運ぶ日々を送っています。今年2月からはこの場所が彼女の居場所となり、深夜の11時前に帰宅するという生活を続けていました。彼女のように、家庭が落ち着かない多くの若者が、この休憩スペースを安息の場として利用しているのが現状です。
しかし、この場所は安全な避難場所とは言い難い状況にあります。2023年4月、休憩スペースが突然の暴力事件に見舞われたことで、その危険性が浮き彫りになりました。ナタを持った男が暴れ、多くの利用者が恐怖に包まれる事態が発生し、その男は逮捕されました。実際、この場所では以前から夜になると酒に酔った人々が迷惑行為を繰り返し、度々警察が出動する事態が起こっていました。
若者のたまり場であった休憩スペースを閉鎖
札幌市はこの問題に対処するため、休憩スペースの一部を閉鎖し、飲酒を禁止するとともに警備員を配置しました。これらの措置により、2023年4月には10件以上あった警察への通報件数が今月には2件に減少するなど、一定の成果を上げています。しかし、これによって若者たちの姿も見られなくなり、対策が彼らの居場所を奪っている側面もあります。
しかしながら今年に入り地下鉄大通駅の休憩スペースが未成年者の暴力によって再び話題の中心となりました。午後5時過ぎ、目撃者の報告によると、10代の男女20人から30人の群れが駅職員に絡み、混乱が生じていました。この騒動の中、10代の若者が駅員を突き飛ばし、警察は現行犯で彼を逮捕しました。
地下鉄大通駅の休憩スペースの平穏は長く続かず、再び若者たちが集まり騒ぐ場所と化してしまいました。
逮捕された少年は、一週間前にも似たようなトラブルを起こしており、その際の対応に不満を持ち、今回の騒動につながったと見られています。事件に詳しい関係者は、「駅職員が前回のトラブルで守り切れなかったことが、今回の因縁につながったのではないか」と述べています。
この事件は、公共の場での若者の行動が如何に社会的な課題であるかを改めて浮き彫りにしました。若者たちのたまり場であった地下鉄大通駅の休憩スペースに対する地域社会の対応が改めて求められています。
援助交際やパパ活に手を染める女子高生たち
一方で、家庭や学校に居場所を見つけられず、さらに唯一の憩いの場所であった地下鉄大通駅休憩スペースを追い出された女子高生の中に経済的な困窮から「援助交際」や「パパ活」に手を出す者も増えています。家族が生活保護を受けており、親からバイトを禁止されているため、彼女たちは生計を立てるためにこのような他の手段に頼るしかない状況です。彼女たちの中にはこのような援交やパパ活で月に20万円以上を稼ぐ者もいますが、その生活は精神的にも肉体的にも大きな負担となっています。
実際にパパ活に手を染めている女子高生に話を聞いた。
彼女は経済的な理由から始めたと説明しています。具体的には、生活費や学費の支払いに困っており、それを解決する手段としてこの選択をしたと言います。
彼女はこう話します。「お金がなくて、学校のこともあるし、将来への不安が大きかったんです。そんな時に友達からパパ活の話を聞いて、試してみることにしました。」
また、彼女は自分の行動に対する社会の見方や批判についても触れ、自己肯定感を得るための一環として、年上の男性との関係から自己価値を見出すことも一因であると述べています。彼女は自身の選択について、「必要だったからやったことで、他人がどうこう言うことではない」と強調しています。
このような背景から、彼女は経済的な援助だけでなく、精神的な支援も求めていることが分かります。彼女にとって、これは単なる資金獲得の手段ではなく、生活の質を向上させ、不安定な状況を乗り越えるための一策となっています。
しかしながらその弱みに付け込み、女子高生を食い物にしている輩が多くいるのもまた事実です。
サチ(17歳)は、札幌のススキノにあるメンズコンカフェに頻繁に通うようになりました。この店では、男性スタッフが女性客を楽しませ、飲食を提供しています。サチは厚化粧で自分が未成年であることを隠し、店の売り上げを伸ばすために高級シャンパンを注文し、一晩で10万円以上を使うこともあります。彼女にとって、この場所は「ホストクラブよりも安く、安心できる居場所」となっています。
サチは、地下鉄大通駅のたまり場がなくなった後、高校を退学しました。彼女はメンズコンカフェでほめられることで承認欲求を満たし孤独感を紛らわせており、そのための高額な支出は、主にX(旧ツイッター)を通じての援助交際で賄われています。サチのように居場所を求める若者は多く、社会的な支援が不足していることが彼女の事例からも明らかになります。
援助交際で得た収入は、彼女の日々の豪華な生活を支えていますが、それは持続可能な解決策ではありません。サチは内心、自分の将来に対する不安と罪悪感に苦しんでいます。彼女は「このままではいけないと思っていますが、どうすればいいのかわからない」と打ち明けます。
心の支えを失った多くの若者たちが、サチと同じように、社会からのサポートの不足を感じています。地下鉄大通駅の「たまり場」が閉鎖されたことは、一つの象徴的な出来事に過ぎません。彼らにとって、都市の隅々に点在するそうしたスペースが、ただの遊び場以上の意味を持っていたのです。
サチのように苦しむ若者たちに必要なのは、金銭的な援助だけではなく、精神的なカウンセリングや教育的な支援も含めた包括的な社会的支援体制です。社会全体で彼らを理解し、受け入れることが求められています。地元コミュニティや政府が手を差し伸べ、彼らが健全な社会の一員として成長できるような環境を整えることが、今後の大きな課題となっています。
大阪を拠点に活動するある弁護士は、札幌でも若者の問題に取り組むことを決意しました。彼は、大阪ミナミや新宿歌舞伎町での支援活動を通じて、夜の街で生活する若者たちが犯罪やトラブルに巻き込まれる危険を実感しており、札幌での若者たちの支援を強化しています。具体的には、悩み相談や職業紹介などの活動を通じて、若者が自らの力で困難を乗り越えられるよう支援を行っています。
さらに、札幌市東区の住宅街にある「ゆる基地」という場所では、中高生が週に2回、100円で自由に過ごすことができます。ここは、特に支援を必要とする若者にとって重要な居場所となっており、彼らが社会との健全なつながりを持ち続けるための一助となっています。
このような状況の中、札幌市としても一人ひとりが安心して過ごせるような支援の拡充が急務です。地域社会全体で若者が直面する問題に対処し、彼らが安全で健康的な生活を送ることができる環境を提供することが求められています。